Beyond Cities – Airbnbと地域活性化 –

直近の過去1年で、日本でAirbnbを利用して宿泊したゲスト数は500万人でした。2017年6月、ホームシェアを含む短期賃貸に関するルールを明確にする「住宅宿泊事業法」が国会で成立しました。Airbnbは、地域の観光業をより活性化し、復興支援や雇用の創出などを通じ、日本の地域活性化の一助となるよう、地方自治体と協働させていただいています。

岩手県釜石市は、東北地方有数の重工業都市として発展し、また、世界3大漁場の一つ三陸漁場の重要な漁業基地として栄えてきました。基幹産業であった鉄鋼業の縮小、2011年には東日本大震災による甚大な被害を受けたほか、出生率低下、高齢化、空き家の増加*というさまざまな課題に対し、多様な人材を受け入れながら取り組んでいます。
さらに、釜石港のコンテナ貨物量の飛躍的増加、橋野鉄鋼山の世界遺産登録、東北横断自動車道の一部開通などの多くのニュースもあります。

Airbnbは2016年釜石市と協定を締結し、釜石市が「活動人口」および「つながり人口」の増加を図り経済活性化を目指す「オープンシティ戦略」を観光の観点からご支援させていただいております。より多くの方々に住宅をシェアしていただくことで、2019年ラグビーワールドカップの開催時、十分な宿泊施設が確保されるよう、農家民泊の推進や新たな住宅宿泊事業の活性に務める所存です。

協定締結後は、農家民泊に関心をお持ちの地元の方々と、他県からお招きした経験豊富なAirbnbホストをお引き合わせし、体験談を共有する場を設けました。また、釜石市の高校生や非営利団体の方々のご協力を得て自然鑑賞スポット、かつて鉄鋼業で栄えたエリア、地元のイベントなど、釜石の通な情報をまとめた「釜石市ローカルガイドブック」を制作しました。

また、奈良県吉野町とは、「吉野杉の家」の取り組みを行っています。Airbnbが寄贈させていただいた宿泊施設を、吉野町が委託した地域の非営利団体の方が町ぐるみでリスティングとして運営するという企画です。建築家の長谷川豪氏が設計した「吉野杉の家」は、地域に伝わる伝統の設計技法と吉野の木材を使用しました。リスティングの管理は吉野町の地域住民コミュニティが行い、収益の一部はすべて地域コミュニティに還元される予定です。

日本の大都市以外**のホストコミュニティには、大きな可能性があります。大都市以外にあるAirbnb登録物件数は2015年の2,200件から2016年には5,300件に増え、ゲスト数は2015年の70,200人から、2016年には3倍以上となる257,500人に増加しました。ホストの収入総額も、2015年は約6億6600万円でしたが、2016年には約25億円と4倍近い伸びを示しています。

141% 大都市以外物件数の前年比成長率

267% 大都市以外ゲスト数の前年比成長率

日本の大都市以外のAirbnbホストのうち、過半数(53%)が女性で、大都市(男性が65%)と男女比が逆転しているのが特徴です。平均年齢は42歳、60歳以上のシニアの割合は11%です。ちなみに都市圏のAirbnbホストは平均年齢38歳、60歳以上のシニアはわずか5.3%。

ULI(アーバンランド・インスティテュート)が、テクノロジーと不動産分野の有識者を募り、東京で開催したイベントでは、地元民としての自信と、観光業による利益を住民一人ひとりが享受できることが日本の地方活性化には不可欠であるということを、パネルディスカッションの登壇者全員が共有しました。また、小規模なホスピタリティ企業にとって、Airbnbのような手数料を低く抑えたオンラインプラットフォームは欠かせないなどの有識者による発言もありました。
*空き家問題に関しては日本全体の問題であり、2033年には空き家2000万戸時代に突入するとの未来予測もあります。野村総研「住宅の除却・減築などが進まない場合、2033年には空き家が2,000万戸超へと倍増」2015年6月22日
** 政令指定都市、中核市、施行時特例市及び特別区以外の市町村にあるリスティングを対象としました。


Keikoさん一家、和歌山県

和歌山県は、高野山のほか、林業や、桃、梅、柿、いちごなどの農業で知られます。Keikoさんは桃農家を営まれています。Keikoさんのご伴侶は、20年ほど前に和歌山県に移住し、小さな土地から農業をスタートして、今では立派な桃農家として活躍されています。

Keikoさん一家は、毎年桃の収穫のピーク時に、農作業を手伝ってくれるボランティアを世界中から受け入れていました。ボランティアの方たちとは、家族のように、一緒に暮らしていました。2015年、受け入れていたフランス人夫妻のボランティアからAirbnbについて聞きました。ボランティアの受け入れ経験があったため、すぐにAirbnbでホスティングをはじめたそうです。

始めてすぐ、Keikoさんはホスティングの楽しさに魅了されました。ボランティアを受け入れる場合は、日中の作業時間だけでなく、寝食も常に一緒に過ごす必要がありました。Airbnbを通じて受け入れたゲストとは、プライベートな時間とのバランスがとりやすくなりました。美しい景観を楽しみたいゲスト、農作業目当てのゲストなど、滞在期間中の過ごし方は様々です。Keikoさん二人のお子さんは、ゲストと遊ぶのが大好きです。子供の教育としても良い機会だとKeikoさんご夫妻は感じています。また、Airbnbのホスティングで得られる副収入は、毎月変動しがちな農家の収入を安定させる一助にもなっています。

“ゲストを信頼できるかどうかは滞在期間の長さに関係ありません。また、自宅にゲストを招き入れることでゲストのホストに対する信頼も醸成されます。家族のように信頼しあい、心のつながりが生まれると、毎日がさらに豊かになる”とKeikoさんはお話になります。

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